台湾 国立台湾師範大学

掲載日:2024-7-16

国立台湾師範大学

2022年度 アジア〈台湾〉

Y.O.(人間社会学域人文学類 3年)

私は20228月~中華人民共和国の大連大学に半年留学する予定で指導教員の方や中国語の教授とコンタクトを取っていましたが、コロナの影響でその年度の渡航は叶いませんでした。しかし代りに台湾への留学はどう?とその時薦められ、台湾の大学への派遣留学を視野に入れ始めました。派遣留学を検討する中で、渡航期間を半年か1年かを選ぶと思いますが、私はできるだけ長い期間現地にいたいと思い、即決で1年にしました。

留学までの準備として、まず派遣留学生として選抜されるために何か提示できる中国語の資格が欲しいと考え、当時中検3級は持っていましたが、国際的に認められる資格であるHSKの取得を目指し、20224月ごろから勉強を始めました。試験は8月に4級を受験しましたが、その後は5級の勉強と並行して、大学の授業の勉強に取り組みました。師範大学の在学証明書(ビザの申請に必要な書類)の発行は1219日と渡航の2か月弱前というギリギリさですが、そのからも入寮申請、学籍番号の発行、一年間の保険加入手続きなどやることが多く忙しいです。

台湾での留学にあたり、日本人学生にとっての一番の壁は言葉ではなく衛生観念だと思います。トイレットペーパーは流せず、隣に設置されたごみ箱に直接入れる必要がありますし、夜市には虫もたくさんいます。道端には吐き捨てられた檳榔やタバコの吸い殻、痰も落ちていますし、比較的綺麗な師範大学の寮でさえ大き目のゴキブリやカタツムリがいます。日本と比べて綺麗とは言えないため、留学で現地に行く前に調べてみて方がよいと思います。心の準備があるのとないのでは違いますからね。

私の留学中の一番の思い出として挙げられるのは、留学開始から3か月ほど経った5月の下旬に、ルームメイトと台中の浜辺で開催される音楽祭のボランティアスタッフとして3日働くというイベントに参加したことです。台湾人の方だけでなく、多くの国籍、背景を持つ人が集まる野外フェスで、持参したテントを張って寝るというなかなか野性的なものでした。現地で働く際に台湾人の方と一日中話したり、現地の観光地を空き時間に見て回ったりと充実した経験ができたことが自分にとってとてもよい思い出だと思っています。

留学中に一番苦労したのは、台湾渡航直後の事務手続き等を一人で行なったことです。台湾に1年間留学する際に居留証というものの申請が義務付けられているのですが、渡航後15日以内に申請を完了できないと罰金が発生するため、ほぼ知り合いもいない中、書類をかき集めて移民署の受付の方にいろいろ質問しなくてはなりませんでした。自分は幸いにも、周囲に同じく居留証の申請を必要としている日本人学生が多くおり、彼らと情報を共有したり、自分でもネットで情報をかき集め、質問を伝えるための表現をホテルの中で練習したりして罰金を回避することができました。ただ大学側から発行されるはずの居留証申請に必要な書類の発行が渡航後13日目とかでしたのでとても焦りました。

台湾の留学中に台湾の文化や伝統をたくさん知り興味が湧きました。金沢大学で留学前まで学んでいたのは中国文学ですが、台湾に行った際にそれらの書物は日本に比べ受容されていないように感じました。そのため、金沢大学では中台の比較などの観点から文学を読み解いていきたいと考えています。また、留学中の10か月はずっと師範大学の学生寮に住んでおり、日本人以外の学生と接する機会が多く、台湾人の方ともたくさん連絡先を交換しました。現在でも頻繁に連絡を取り合っており、自身の語学力を落とさないようにするという面もありますが、いろいろと相談に乗ってもらいアドバイスをもらったりすることもできるため、これからも彼らと連絡を取り続けたいと思っています。

今後の進路について、金沢大学で2年間勉強しているときに、教職課程を取っていた私は、卒業後は教師になるものだと漠然と思っていました。しかし、就活し一般職に就くこととの二者択一で悩んでいたため、留学終了後の進路について留学期間が終わりに近づくにつれて焦燥感が募り始めていました。ですが、台湾人の方やルームメイト、台湾で就活中の友人に相談に乗ってもらい、まず普通に就職し、社会人経験を積んでから教職に就くという選択を提示してもらいました。どちらか一つしか選べないと思考が凝り固まっていた私にとって、両取りのこの案は目から鱗の打開策のように思いました。そして現在は就活の準備を着々と始めています。

留学したことで自分の中で大きく変わったと思うことは、周りの目を気にしないで主張ができるようになったことです。私はもともと主張をしないタイプの人間で受動的に物事に取り組んできました。しかし、台湾の方は自己主張が激しく、要求は直接伝えてきます。ですが、これは我が儘や面の皮が厚いこととは異なり、自分が必要としているものを主張しているに過ぎず、自分の意見を言うことを厭ったり躊躇うのはもったいないと思うようになりました。日本人のおしとやかで和を尊しとする姿勢は美徳だと思いますが、能動的なアクションも時には必要なのではないかと感じます。

最後に、これから留学に挑戦してみたいと思っている学生さんにですが、右も左もわからなくとも臆することなく挑戦してみることを強くお勧めします。留学は怖いと思う人もいるでしょうし、すぐに日本に帰りたくなる人もいると思います。しかし台湾に留学した人は皆、半年、1年の期間に関わらず、帰るのを渋り、台湾にまだ居たいと言います。それだけ留学中の日々は充実し、走り続けて息の詰まる日本での生活を忘れさせます。言葉の壁は大きいかもしれませんが、一番大事なのはジェスチャー表情などノンバーバルコミュニケションですし、若いうちに様々な経験をしておくことは必ず将来に役に立ちます。話は逸れますが、バスケ漫画の金字塔である「スラムダンク」の作中に登場する澤北というキャラクターは高校バスケにおいて常勝でしたが、さらなる強さを求めます。インターハイ直前に神社で「自分に必要な経験をください」と祈願し、その後初めての敗北という経験をしますが。彼はその経験を粮に更に強くなり、世界で活躍するプロへと成長していきます。私はこれを「澤北理論」と勝手に呼んでおり、まだしたことのない経験は時間とお金を使ってでも得たほうが良いと考えています。留学していた1年間は長いようで短いですが、考え方や人生に大きな影響をもたらします。そのため、就活などで留学経験のある人材は一目置かれるとも言われています。必ず留学してよかったと思えるはずです。ぜひ酸いも甘いも味わってきてみてください。

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